ピアノの楽譜を読むときに音符の名前を覚えるのに苦労している人は、音符の読み方がいくつかあることを知っておくと良いでしょう。正しい位置に手を置くために音符を認識し、名前を覚えることは重要です。しかし、いったん弾き始めてからは、その都度すべての音名を確認する必要はあまりありません。
音符を読む際に、非常に効果的な別の方法があります。それは「ピアノの音程」を覚えることです。
これを覚えれば、弾いている音と次の音との間の距離を認識できるので、いちいち音名を考えなくても済むのです。
「音程で譜面を読む」ということ自体は新しいことではありませんが、意外にも従来のピアノ教本では教えられていません。
音名をひとつひとつ確認していくよりも早くて簡単なので、楽譜を読むのが速い人はこの方法を使っていることがよくあります。今回はこの「音程による読譜」をご紹介しましょう。楽譜を読むスピードが上がるため、曲を早く覚えることができ、さらに鍵盤の配置に慣れるのにも役立つ方法です。
音程でピアノの楽譜を読む
ピアノの音程で楽譜を読むことは、ほとんどの人にとって非常に直感的です。目で見ているもの(楽譜)と、鍵盤に触れている手(演奏)をより直接的に結び付けることで、次の音名を思い出すという中間のステップを省くことができるので、演奏をスピードアップできます。
従来の楽譜の読み方
ピアノの指導法が、時代とともにどのように変化してきたかを考えるのはなかなか興味深いものです。ほんの一世代前までは、ほとんどの教則本が「一度に一音ずつ」を推奨していましたが、この方法は読譜と演奏を学ぶのに時間のかかる方法でした。膨大な時間を費やした後に、ようやく生徒は簡単なメロディを読めるようになり、簡単な和音も読めるようになりました。
今日の楽譜の読み方
しかし今では、楽譜を読むのにもっと直感的なアプローチがあります。「音程を理解し、パターンを認識する力を養う」ことで楽譜の読み方を学ぶことができるようになっており、これはピアノの初心者の方にも有効な方法です。
音程の種類について
音楽理論でいう「音程」には、次の5種類があります。
- 長音程:2つの音がメジャースケール(長音階)にある場合、「第2音、第3音、第6音、第7音」は長音程になりえます。
- 短音程:2つの音がマイナースケール(短音階)にある場合、「第2音、第3音、第6音、第7音」は短音程になりえます。
- 完全音程:「完全音程」と呼べるのは「第4音、第5音、第8音(オクターブ)」だけです。
- 増音程:「完全音程」における上の音を半音上げるか、下の音を半音下げることで、「増音程」になります。いずれの音程も増音程になりえます。
- 減音程 :「完全音程」における上の音を半音下げるか、下の音を半音上げることで、「減音程」になります。いずれの音程も減音程になりえます。
次の表は、どの音程がどのタイプになるかを視覚的に示したものです。
それでは、実際に譜例を見ながらそれぞれの音程を確認してみましょう。
下の譜例は長音程、短音程、減音程、増音程の「3度」を示したものです。「3度」が「完全音程」になることはありませんので、覚えておきましょう。
(左から「長3度」、「短3度」、「増3度」、「減3度」)
次は、「4度」の譜例を見てみましょう。
(左から「完全4度」、「増4度」、「減4度」)
音程で楽譜を読んでみよう
音程を読みながらピアノを弾けるようにする初めのステップとして、まず、以下の2点をおさえましょう。
- 「今の音と次の音が “ひとつだけ離れている” のか、それとも “ふたつ以上離れているのか”」という点
- 「ふたつ以上離れている場合は、どの程度離れているのか」という点
ピアノにおけるステップ
「ステップ」とは、隣接する音符のことです。この音符は、基本的にひとつ隣の指で弾きます。下の動画にある例では「ド、レ」を、「親指と人差し指」で弾いています。
上または下に動く「ステップ」を使うことで、音楽のメロディを作ることができます。また、音の高さが変わらない場合(= 同じ音符を繰り返す場合)もあるので覚えておきましょう。
Skooveアプリでは正確な指使いが画面下部に表示され、あなたが鍵盤を正しく弾くまでアプリが待ってくれるので、しっかり練習できます。
(下の動画では、音名が「C、D」となっていますが、実際のアプリでは「ド、レ」になっていますのでご安心ください)
下の2つの音符を見てください。
最初の音は「中央ド」で、次の音はひとつ高い音になっていますね。これが「長2度」の音程になります。
親指(1番の指)で「中央ド」を弾けば、次の音は人差し指(2番の指)で弾けることがすぐにわかると思います。これが「2度音程」の指の動きになります。
次の例では、さらに2音増やしてみましょう。
3つ目の音と4つ目の音も、ひとつずつ上に移動する形になっていますね。この2音を、手の位置は変えずに中指(3番の指)と薬指(4番の指)で弾いてみましょう。
ここまで、音の名前を特に考えることなく弾けたのではないでしょうか?(ちなみにこれは「Cメジャースケール」の始まりの4音なので、覚えられる人は覚えておきましょう)
では、次の練習です。
まず開始音を探してください。
その後、「ステップ」のパターンに従って、今度は音を下げていきます。
下の譜例は、上や下にひとつずつ移動する音符(=ステップの音符)で出来ています。これまでの3つの譜例で学んだパターンで出来ているので、自分で弾けるかぜひ試してみてください。
ピアノにおけるスキップ
「隣接する音符」は「ステップ」でしたが、今度は「ふたつ以上離れている音符」を「スキップ」と呼ぶことにします。
ここでは、この「スキップ」を練習してみましょう。
長3度の音程は「スキップ」になります。下の譜例を見てください。
この2つの音を弾くには、親指で「中央ド」を弾き、人差し指(2番の指)を飛ばして、中指(3番の指)の音を弾きます。弾いている2つの音の間に、弾いていない鍵盤があることを確認しましょう。
この「スキップ」をさらに試してみたいと思います。手の位置はそのままで、下の音符を弾いてみてください。
中指(3番の指)と、小指(5番の指)で弾けましたか?
では、この2つのパターンをまとめたメロディを試してみましょう。
2つ目と3つ目の音は同じ音であることに気付きましたか?
これも重要なパターンです。「ステップ」や「スキップ」だけでなく、同じ音が繰り返されることもあります。
この「スキップ」は「長3度」(半音4つ分)の音程になっています。この音程はコードを読んだり、弾いたりするのにとても役立つ音程です。半音4つ分の「長3度」の他に、半音3つ分の「短3度」もあります。これについてはまた後でくわしく説明します。
スキップとステップの組み合わせ
「ステップ」と「スキップ」が混ざったメロディを弾くことは、パターンを認識する読譜力を養うために効果的な練習法です。
効果的な学習を行うために、メロディのパターンと、そのパターンに反応する指の感覚に集中しましょう。
「スキップ」と「ステップ」は、上がることもあれば下がることもあります。また、次の譜例では、すべての音が「Cメジャースケール」の音であることを覚えておきましょう。この練習では、白鍵だけを弾きます。
もし、この練習にサポートが必要な場合は、Skooveアプリを使ってみましょう。正しい手の位置と指使いができるようにガイドしてくれます。
Skooveアプリは、あなたが正しい音を弾くまで待ってくれるので、鍵盤を確認するために下を向く必要がありません。
これは、鍵盤の位置感覚や、あなたの耳の音程感覚を養うのにとても効果的な方法なのです。
短い曲で音程を練習しよう
では、続けて弾いてみましょう。最初の音については、音名を知る必要があります。この音を中指(3番の指)で弾き始めます。
このメロディには、ステップ(2度)やスキップ(3度)よりも離れている音程がひとつだけあります。見つけられるかどうか確認してください。
2小節目の終わりから3小節目にかけて、「ソ」から「レ」に下がる音程がありますね。この音程は、小指(5番の指)と人差し指(2番の指)で弾きます。この旋律的音程は「4度」になります。
指の動きと音程の広さを意識しながら練習することが重要です。Skooveアプリなら、アプリがあなたの演奏を聴いて、すぐに改善点を示してくれます。
旋律的音程と和声的音程
ここまでは、「旋律的音程」を見てきました。これはメロディを構成する音程です。今度は「和声的音程」を見てみましょう。これはコードを作る音程です。メロディのように横の音程ではなく、コードを構成する縦の音程を見ます。
旋律的音程のおさらい
メロディを作るために、単音で演奏される音符の並びは「旋律的音程」とみなされます。ほとんどの場合、ピアノでは右手で弾きます。
和音的音程の説明
同じ拍に音符を重ねて和音を作った場合、その音程は「和声的音程」と呼ばれます。多くの場合、ピアノでは左手で弾きます。
最も一般的なのは、「トライアド(=三和音)」です。3つの音を重ねたもので、最も低い音がルート音になります。下の譜例は「Cメジャーコード」を示したものです。
トライアドの定義
トライアドとは、「3つの音」という意味を持ち、「3つの音で作られたコード」の総称になります。
トライアド(=コード)は「2つの”3度音程”」で作られます。つまり、長3度と短3度で構成されるのです。
コードにはメジャーとマイナーがあり、「長3度」がコードの最下部にある場合は、メジャーコードになります。逆に、「短3度」が最下部にある場合は、マイナーコードになります。
その他に、ディミニッシュコード(=減和音)およびオーギュメンテッドコード(=増和音)もあります。
トライアドの最低音および最高音の音程は「5度」です。下の例の1小節目には「Cメジャーコード」がありますが、ここの「ソ」はCメジャースケールの主音から5つ上の音で、これは「完全5度」になっています。
Skooveアプリでは、最適な指使いを見ながら、トライアドを弾く練習ができます。
長音程と短音程について
では、「長3度」と「短3度」の音程の見分け方について、もう少しくわしく見てみましょう。この音程は特に重要なもので、基本的な和音の響きを決定します。
長3度の見分け方
「長3度」とは、基準となる音(ここでは「ド」)から数えて、半音4つ分の音程を指します。
短3度の見分け方
「短3度」は、基準となる音(ここでは「ド」)から数えて、半音3つ分の音程を指します。
「長3度」と「短3度」は、メジャーコードとマイナーコードを作るための基礎となるものです。また、低い方の音は常に「ルート音」になることを覚えておきましょう。
ピアノ鍵盤での音程
音程を理解すれば、楽譜が速く読めるようになるだけでなく、鍵盤の配置や方向性の理解も進みます。指の下にある鍵盤の配置感覚を養うことで、ピアノをより簡単に、流暢に弾けるようになるのです。
音程で楽譜を読み、演奏してみよう
音程を通すことで、「ピアノを弾く指のための言葉」を使えるようになります。これはどういうことでしょうか?
ここまで記事を読まれたあなたなら、「 “ド” から始めて、上にステップして、上にスキップして、下にステップする」というメロディの動きが少し分かるのではないかと思います。
最後の音を(鍵盤を見ないで)弾けるようになったら、あなたの指と鍵盤に物理的な感覚が生まれた証拠だと言えるでしょう。これが、ピアノ演奏技術を高める方法のひとつになるのです。
初心者にとって、ピアノを弾く指と鍵盤の物理的感覚を築くことはとても重要です。 この音程を使った練習を行うたびに、そのスキルは磨かれていくはずです。
音程と鍵盤の物理的な感覚を養う
今回ご紹介した練習を通して、音程を使って鍵盤を弾く感覚を身につけましょう。Skooveアプリは、あなたの演奏をリアルタイムでチェックしてくれるので、鍵盤を見る必要はありません。これは、鍵盤を弾く感覚を高めるのに最適な方法なのです。また、「楽譜の読み方」コースの「応用編」は、この感覚を高めるのに最適なレッスンになっています。
音程のまとめ
当記事では、音程についての解説を行いました。今回は、「2度、3度、4度、5度」の音程を学びましたが、そのうち「6度、7度、8度(=オクターブ)」の音程も弾けるようになるはずです。
当記事の締めくくりとして、今回はこの曲をご紹介して終わりにしたいと思います。この曲では、左手でより広い音程を弾きますが、右手では今回学んだ音程がしっかり出てきます。ぜひ挑戦してみてください。
音程を使うことで、さまざまなパターンの認識ができるようになり、楽譜が読みやすくなるという例をご紹介しました。
音程は「指がもつ言葉」とも言えるもので、音程を覚えると「鍵盤と指がつながる感覚」を得られます。この知識と技術で、新たな読譜力、聴音力、そして演奏力を身につけましょう。
このブログ記事の著者:
エディー・ボンド
エディー・ボンド(Eddie Bond)は現在、米国ワシントン州シアトルを拠点に活動するマルチ・インストゥルメンタリストの演奏家、作曲家、音楽講師です。これまでアメリカ、カナダ、アルゼンチン、中国などで幅広く演奏活動を行い、40枚以上のアルバムをリリースしています。また、10年以上にわたって、さまざまな能力レベルの生徒に音楽指導を行っています。
発行:リディア・ホーヴァン(Skoove)